墜落的トキシック
好きな人
◆
修学旅行から帰ってきて、数週間が経ち。
教室からは修学旅行前のそわそわした雰囲気がなくなって、すっかり日常に戻った。
楽しみにしていたもの、かつ準備に時間をかけてきたものがなくなると、変な感じだ。
手持ちぶさた、というか何というか。
ちなみに今は、化学の授業中。
今日は実験をする予定だ。
教壇で実験の説明をするニッセンの話を右から左へと流しながら、くあ、とあくびを零した。
説明が長すぎて頭に入ってこない。
襲ってくる眠気と戦いつつ、ぼんやりとななめ前の席に座る侑吏くんを見つめる。
教室での席は遠いけれど、たまたま実験の班が同じになったんだ。
「……っ」
じっと見つめていたからか、視線を感じたらしい侑吏くんがふとこちらを振り向いて。
慌てて視線を逸らす。
挙動不審に見えなかったかな。
……なんて、らしくない乙女な思考回路になってしまっていることに、後から気づいて顔を覆った。だめだ、重症だ。
侑吏くんに対して、そういう私の中の女の子の部分が顔を出すことに、まだ慣れない。
いちいち恥ずかしくなってしまう。