墜落的トキシック
「今日も、家寄ってく?」
流れるように頷きかけて、
はっとしてやめた。
「……ううん。今日はいいや」
まるで日課のように
放課後はあたりまえにハルの家に入り浸っている。
でも、今日は駄目だ。
久しぶりに、駄目な日。
「そっか。じゃあ、また明日」
気づけば、もう家の前だった。
ハルと私の家は向かいにある。
私の言葉にあっさり頷いたハルは、特に後ろ髪を引かれるような様子もなく、仁科家に吸い込まれていった。
「……っ」
後ろ髪を引かれているのは、私の方だ。
決して振り向いたりはしないハルの後ろ姿が扉の向こうに消えるまで見つめながら、思う。
───ハルと私の関係は、結局のところほとんど変わっていない。
毎朝毎夕の登下校も、放課後の時間も、会話の温度も距離感も、変わらなかった。
『別れよう』
ハルのあの言葉で変わったことといえば、
肩書きが “彼氏彼女” から “幼なじみ” に戻ったことくらい。