墜落的トキシック
「ちょっと待って」
水を差したのは、隣に座る佐和くんだった。
「侑吏……?」
突然口を挟んだ佐和くんに、北村さんがきょとんとしている。
そりゃそうだ。
この交渉は私と北村さんの個人的なもので、佐和くんには関係ないはず。
戸惑いを隠せない私たちを差し置いて、佐和くんは口を開く。
「席の交換は駄目」
「はあ!?」
思わず叫んだのは私。
声はあげなかったものの、北村さんも大きく目を見開いていた。
急に口を開いて、何を言い出すかと思えば。
駄目って……なにそれ。
「どういうことよっ!」
睨みをきかせながら詰め寄るけれど、佐和くんは何を考えているかわからない表情で淡々と口を開く。
「くじで決めたものを勝手に変えられると困る。今回、俺の隣の席は久住さんで決まり」
こういうときだけ、学級委員長っぽいことを言う。
うっ、と言葉を詰まらせていると北村さんは僅かに肩を震わせて。
「……っ、でもっ私、侑吏の」
「琴葉」
低い声。
佐和くんに名前を呼ばれた北村さんはもう何も言わなかった。