スパークリング・ハニー


遠いよ。果てしなく、遠いの。
それを改めて突きつけられたような気がした。


知ったような気でいた。
近づけたような気でいた。


窓から眺めることしかできなかった頃に比べて、今は、話せたり、同じ空間にいられるようになったから。


だけど、私が見ていたのは、篠宮くんの眩しくて、明るいところだけだ。「憧れの篠宮くん」の部分だけしか、見えていなかったんだ。


知らないことがたくさんある。
私は、きっと、篠宮くんを構成するいちばん大事な部分を知らない。



グラウンドで見つけてしまった、笑顔の影。
篠宮くんの奥に、眠るほの暗いなにかがあるのなら、それも含めてぜんぶ知りたい。そしてあわよくば、私が。

私が、ひかりを当てて、あたためたい。


あの受験の日に、篠宮くんがそうしてくれたように。



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