スパークリング・ハニー
「……っ」
────なんて、思うだけなら簡単だ。口先で言うだけなら誰でもできる。
ほんとうの私は、その大事な部分を篠宮くんに尋ねることすらできなくて、こそこそと探るようなことばかりしているくせに。
最低で、傲慢。
ほんとうのところは、私が篠宮くんの心に踏み込んでいいかさえもわからない。
「瑞沢、今日やっぱり変じゃない?体調悪い?」
「っ、や、大丈夫だよ……!」
熱がないか確かめるように、篠宮くんの手の甲が、おでこに押し当てられて。思わず体をのけぞって逃げてしまう。
大丈夫、の言葉を聞いてもまだ心配そうに篠宮くんは眉を寄せている。
「なにかあったら言ってよ、遠慮なく」
「……うん」
なにかあったら言ってよ。
────ねえ、篠宮くん。私がきみに同じことを言ったら、どんな顔をする?