スパークリング・ハニー
〖SIDE 朝陽〗
────ガラガラッ。
教室の扉を開ける音って、どうしてこんなにも響くのだろうか。特に、放課後、ひとがいないと、余計にそうだ。
額から首にかけて流れる汗を練習着の袖口で拭いつつ、教室の戸を勢いよく開けた。
部活の休憩中。必需品、タオルを教室のロッカーに忘れてきたことに気づいて、慌てて取りに帰ってきた。
前にもこんなことがあった気がするけれど、さすがにタオルはないとまずいから。
教室に入って、すぐに蛍光灯がついていることに気付く。放課後、教室に残っているといえば。
「瑞沢……?」
そう、瑞沢。
毎日、小森と一緒に帰るためにここで待っていることはよく知っている。
それはなにも同じクラスになってから気づいたことではなく、一年の頃から。たぶん、誰よりも先に気づいていた。
瑞沢はサッカーが好きなんだと思う。
グラウンドから窓を見上げれば、いつだって瑞沢はまっすぐにこちらを見つめていた。
────同じように、俺もことあるごとに教室を見上げて、その姿を探していることを、彼女は知らないと思うけれど。