スパークリング・ハニー
瑞沢が頬をくっつけている机には、数学のワークとノートが広げてあった。ノートの上で数式は中途半端に途切れていて、そこからミミズみたいな線が続いている。
解いている途中で寝オチたんだろうなって一目瞭然。
そのミミズのような筆跡にすら、心臓を揺すられる。
ふ、と無意識に笑みが零れた。
ふと、机にくっつけた頬が潰れて平らになっていることに気づく。ちょっと痛そうだし、なんなら起きたときには跡が残ってしまいそうだ。
そういえば、と。
これから使うものとは別に、予備用のタオルもロッカーに放り込んでいたことを思い出した。
数回折りたたんだそれを、瑞沢の頭をそっと持ち上げて机との間に挟んでやる。
枕代わり。これで、少しは楽になるんじゃないだろうか。
「……それにしても」
起きないな、全然。
この距離で、これだけ色々していても目を覚ます気配は全然ない。どこまで深く落ちているのだろうか。