スパークリング・ハニー
────実のところ、彼女とこれだけ距離を詰められるのは、今、彼女が眠っているから。
瞼がおちていて、瑞沢の、あの濁りのない瞳が見えていないからだ。
瑞沢の眼差しはいつもまっすぐで、眩しすぎて、ときに目を逸らしたくなる。逃げたくなってしまう。
瑞沢はどこまでも綺麗だから、そんな彼女と自分を比べてしまう。彼女の澄んだ瞳に、なにもかもを見透かされてしまいそうで、怖くなる。
「……んん」
瑞沢が少し身じろぎして。
その手首を飾るブレスレットが、しゃらん、と音を立てて揺れた。
俺が彼女の誕生日に贈ったものだ。
身につけてくれているんだ、と嬉しくなる。
普段は校則に引っかかるから、きっと放課後だけ。
きらめく蝶々のモチーフは、瑞沢そのものだ。きらきらしていて、眩しくて、自分の羽でどこまでも高く飛んでゆける。
俺とは全然違う。
俺よりずっと綺麗で眩しくて、尊かった。
「……好きだよ」
彼女が起きているときに告げるつもりはさらさらない言葉。
もとより、きみの隣にいられるなんて思っていない。きみにはもっと相応しいひかりがあると思うから。
ただ、出逢ったあのときから、瑞沢光莉というひとりの女の子に、強烈に憧れている。
視線の先にはいつもきみがいる。
きみのようになりたい。
これ以上近づけなくてもいい、憧れていたい。
ずっと見ていたい。
そう思ってやまない人。