スパークリング・ハニー
言葉尻がとぎれたままの私に篠宮くんが不思議そうな顔をしている。
続けるセリフなんて、準備していない。
慌てて言葉を探して、ごまかす。
「ええと、その……」
「……?」
「なんか、篠宮くんって……いい匂い、するね?」
苦しまぎれにも苦しすぎて、ごまかすの下手くそか、って心のなかで突っ込んだ。
ああ、案の定、篠宮くんもびっくりしている。
「ああいやその! 運動して汗かいてるはずなのに、爽やかっていうか……」
咄嗟に出た言葉だけど、事実でもある。
いつも思っていたんだ。
普通汗くさくなったりもするものだけど、部活のあとでも、こうして球技大会のさなかでも爽やかな、なんていうんだろう、柑橘っぽい香りがするというか。
主張しない程度の、いい香りが漂ってくるの。
「……そう?汗くさくない?」
空気を変えようとした私に乗っかってくれたんだと思う。
大袈裟なくらい明るい声。
それを聞くとまた胸がぎゅうっとして、つきんと痛くて。
でもそれはひた隠しにしたまま口角をあげる。
「全然!なにかつけてる……?」