スパークリング・ハニー
首を傾げつつ、あれなんだかこの会話どこかで、ってデジャヴを感じる。
そうだ、今日の朝、こもりんとみなみちゃんと同じような話をしたんだっけ。
「あー……、これかな」
そう言って篠宮くんが見せてくれたのは、やっぱり制汗剤だった。鮮やかなイエローのボトル。
「それ何の香り?」
「シトラス。瑞沢は、ベリーのやつ使ってるよな」
「ええ、よくわかったね!?」
素で驚くと、ふは、って柔らかく笑った。
……ああ、だめだ。
その笑顔が好き、だけど、切なくなる。
だって、今見せてくれているこの笑顔はきっと100パーセントなんかじゃない。
私には100パーセントは暴けない。
「そうだ、篠宮くん、知ってる?」
「ん?」
「ジンクスがあるんだって。制汗剤のキャップを好きな人と交換して使い切ったら、願いが叶うっていう……」
ふと思い出した今朝の会話。
何も考えないままに、つい口走ってから、私、何を言ってるんだろうって後悔した。
別に今言うべきことじゃなかった。
それに “好きな人と” なんて、このタイミングで言ってしまえば、“篠宮くんと” と言っているようなものだ。
幸い、篠宮くんはそんな意味にはとらえていないようで、助かったけれど。