スパークリング・ハニー
「嘘、って」
12月初旬。
合宿が終わって数週間が経ったけれど、タイミングを失ったきり篠宮くんがまだ退部届を出せていないということは、こもりんや梶田くんから聞いている。
そうこうしているうちに、もうすぐ二学期の期末テストだ。
週末の部活がオフになるこの期間がチャンスだと思って篠宮くんを呼び出すことにしたの。
……テスト勉強を口実にして。
『あの、篠宮くんが良ければなんだけど、今週の土曜日、一緒に勉強してくれませんか……?』
『土曜?いいよ、全然』
快くオーケーしてくれた篠宮くんに、少し後ろめたくは感じたものの。
「今日は、私のわがままを聞いて、ほしくて」
「わがまま……?」
こくり、首を縦に振る。
深く息を吸って、それから吐いて。
深呼吸してから、口を開いた。
「あのね、篠宮くんがサッカーを辞める理由を潰しにきた、の」
「……!」
なんでそれを、って顔してる。
私が知る由もないことだった、本当は。
「ごめん、勝手に全部、聞いたの。篠宮くんのため、とかじゃなくて、これは私のためなの。……お願いします」
しばらく驚いて固まっていた篠宮くんだったけれど、頭を下げた私に負けたよって顔をして眉を下げて困ったように笑う。
「……じゃあ、行こっか」