スパークリング・ハニー


「し、のみやく……っ!」




思わず後ずさると、机にぶつかってガタタンと激しい音がした。

恥ずかしいことこの上ない。


でもでも、だって。

動揺するのも仕方ないでしょう。




「どうして、ここに……?」




さっきまで部活動真っ最中だったはず。

そして、篠宮くんは部活が終われば、教室に寄ることなく帰る、はず。



いやいや、なにも篠宮くんの行動パターンすべてを把握しているわけではないけれど、と言い訳じみたことを考えつつも頭のなかにハテナが浮かぶ。


だって、いつものことだから。



私は放課後、毎日のように教室で過ごしているけれど、そこに篠宮くんが現れることはまずない。

この前のように、部活中に忘れものを取りにきた、ということすらめったにないの。



そして、こもりんと一緒に帰る私の前方には、いつも篠宮くんとみなみちゃんの後ろ姿がある。

つまり、サッカー部の練習が終わって、私がこもりんと合流するまでの間に、既に学校を出ているってことだ。




だからね、篠宮くんが部活動が終わってから教室に寄るなんてことはしないって、知っているの。

なのに、どうして、今。




「どうしてって」




はあっ、と肩で息をする篠宮くん。

篠宮くんが息切れしているなんて、珍しい。


もしかして、ここまで走ってきたの?





< 25 / 299 >

この作品をシェア

pagetop