スパークリング・ハニー


「そうだ、これ」



篠宮くんがなにかを差し出してくれる。
布……いや、上着?



「今日、寒いだろ」



広げてみると、ウインドブレーカーだった。
胸のところに、“篠宮”って刺繍が入ってある。

きっと、部で指定のものなんだろう。




「え、これ……借りていいの?」

「うん、そのために持ってきたんだし」



ありがとう、って私にしてはぶかぶかのそれに腕を通す。

その様子を篠宮くんはどこか満足げに眺めていた。




篠宮くんの出る試合をこうして応援しに来るのは、夏の大会のとき以来。

あの夏から、たくさん変わったことがあるけれど、変わらないことだってある。



篠宮くんのこうした細やかな優しさもそのひとつだ。

そのあたたかさに触れるたび、どんどん篠宮くんを好きになる。





「そうだ、私も、これ」




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