スパークリング・ハニー
「え……?」
私が差し出したタッパーを受け取ったあと、篠宮くんはきょとんとしている。
「たいしたものじゃないんだけど、差し入れです」
中身は、手作りのはちみつレモン。
お兄ちゃんの現役時代に、お母さんがよく作っていたものだ。
お母さんに教えてもらいながら作ったの。
たしか、篠宮くんは合宿のときにはちみつレモンのジュースを飲んでいたから、好きなのかなって。
それに、味はお兄ちゃんのお墨付きだから大丈夫だと思う。
少しでも、篠宮くんの力になれたらって思って。
「ありがと。大事に食べる」
「ふふ」
思わず笑みをこぼすと、篠宮くんは眩しいものを見るように目を細めて。
「瑞沢、俺、絶対勝つから。見てて」
うん、見てるよ。
ずっと、見てる。
「絶対、勝ってね!」
こつん、と篠宮くんのこぶしに自分のそれをぶつける。
聞こえはしなかったけれど。
待ってて、って篠宮くんの唇が小さく動いたように見えた。