スパークリング・ハニー
〖SIDE みなみ〗
「光莉、さすがにそろそろ決めなよー。悩みすぎ」
「う……っ、わかってますよう」
こもりんの言葉にむう、と唇をとがらせたひかちゃん。
私とこもりんがもう既に、パレットの上で色をつくりはじめているのに対して、ひかちゃんはまだううん、と唸っている。
ずいぶんと悩んでいるみたい。
「それもこれもみなみちゃんのせいなんだからあ……」
「えっ、私?」
ぐでーんと伸びたひかちゃんに恨めしげに見つめられて、とばっちりを食らった私は目を見開いた。
「だって、美少女はどんな花でも似合うもん!選べない!」
「え、」
「まさに立てば芍薬 座れば牡丹 歩く姿は百合の花〜〜だも〜ん」
なんて言いながら、ひかちゃんが白いユリの花を手にとって、また悩ましげに息をつく。
「……いいよ? 適当でも」
「テキトーはだめなの!」
助け舟を出すべく、“適当でも”と提案したのだけど、妥協はしたくないらしく。
────むせ返るような色とりどりの花の匂い、その間を縫って鼻腔をくすぐる画材の匂い、そんな美術室にて。