スパークリング・ハニー
「あったかいお茶、ある?」と首をかしげた彼にこくんと頷けば、力の入らない私の代わりに鞄から取り出してくれた。
「ありがとう……」
あたりが寒いから、水筒から湯気が立ちのぼる。
ごくん、とコップ一杯分ほど口にすれば、体のうちがほんのり温まったような気がした。
「これも、よかったら」
そう言って、カイロを握らせてくれる。
きっと今の今まで彼自身が使っていたもので、あったかかった。
じわり、優しい熱が指先から伝ってくる。
「え、悪いよ……。こんなの」
「いやいいよ。俺、まだ他に持ってるし」
にこ、と笑ってもうひとつのカイロをしゃかしゃか振って見せてくれる。
あったかい飲みものと、カイロと、それからひとの優しさと。
それらに触れたことで、少しだけ楽になる。
さっきまで、もうだめだってぐるぐる暗い気持ちだったところに、光が差したような感じ。
「どう? ちょっと立てそう?」
「えと……たぶん」
「寄りかかっていいよ。ゆっくり歩こ」
手を差し伸べてくれる。
さっきまで立てなかったけれど、今度は足に力が入る。