守護霊


―――――― 


その家族があっしらの前に現れたのは、

長野オリンピックで日の丸飛行隊が金メダルを取った興奮がまだ冷めやらぬ春だった。



「・・玉さ・・。」


あっしが声をかける前に、既に玉さんは起き上がって参道の先を凝視していた。



「・・・何でしょうね・・?」


「分からん・・・。」



丑の刻にもなるというのに・・


普段はみんな寝ている時間に誰かの足音が聞こえてきた。


真夜中に参拝する人は決して珍しいわけではなかったけど、

“空気が淀む”、そんな表現が当てはまる異様な雰囲気に玉山神社が包まれていた。


玉さんも恐らく同じ様に察知したんだろう。


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