無気力なキミの独占欲が甘々すぎる。



***


あれから一度家に帰ったわたしは、夏向のカーディガンを雑に紙袋に入れて、家を出た。



別に、夏向に会いたくて会いに行くわけじゃない……。

カーディガンを返しに行くのが目的……と、何度も自分に言い聞かせる。



こんなにもあっけなく、夏向の元に行ってしまう自分に腹が立つ。


自分と夏向に対する怒りの感情を抑えながら、早足で夏向の家に向かった。



前と同じようにインターホンなんて押さず、玄関の扉を開けて中に入る。


相変わらず人の気配はない。



そして階段を上がり、夏向の部屋の前まで来た。



そのまま扉を開けようかと思ったけれど、

ふと自分の中のほんのわずかにある賢い思考が動きに制御をかけた。



……今、このタイミングで夏向がわたしをここに呼んだのは、どういう意図があるんだろう。


わざわざカーディガンを返すためだけに、
呼びつけるなんておかしい……。

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