月の見える丘で君と何を話そうか
私はもう涙も出なかった
もう何も出るものがなかった
待望の楓花が生まれて
いつも『可愛い』って
『大きくなったら』って
『いつになったら歩くかな?』って
1番楽しみにしていた優斗が
もう楓花の成長を見ることができない
それが1番悲しかった
納棺の前日
冷たくなった優斗の隣で
いつもの様に楓花と布団を敷き川の字で寝る
これが出来るのもこの日で最後
楓花も分かっているのか優斗の隣から離れない
なかなか寝付かない楓花は得意のハイハイで
祭壇と優斗の寝ている間を行ったり来たりしている
「ほら楓花、花が落ちちゃうよ!こっちおいで」
言った矢先飾られていた紫ともピンクとも言える菊の花が床に落ちた
楓花は小さな手で花を拾い
優斗の布団の上にのせた
まだ7ヶ月で何もわかって居ないはずの楓花·····
それでも楓花がとった行動は優斗にとって最高の弔いだっただろうと思う
四十九日が終わる頃
楓花は少し言葉が出るようになった
初めて話した言葉は
『ぱぱぱ』
きっと大人の勝手な妄想だろう
でも楓花は『ぱぱ』の言葉を最初に覚えた