夕闇の時計店
「夜桜の柄……衣月にぴったりだと思ってな。どうだ?」

どうもこうも、好きな人が選んでくれて、似合うと言ってくれて嬉しくないわけがない。

「これがいいです……!」

「ふっ…気に入ったようで良かった。帯なんかは揃いになっているから早速着替えるといい。俺は、外で待ってる」

「あっ、はい!」

パタン、と襖が閉まる。

「えっと……?」

思わず返事をしちゃったけど、着物……着たことない……!

何枚か重ねて……?

夜桜の柄は最後に羽織って帯で締めるのかな……って帯も種類が……この白い服が一番先……だよね?

「困ったな……分からない」

順序が分かっても着付けを一人で済ませられる自信なんてないし……でも、緋瀬さんに頼むのは恥ずかしい。

うぅ……恥ずかしくてもこのままだと緋瀬さんとご飯に行けない。

「ひ、緋瀬さーーーん!」

スパーン!

襖が勢い良く開いた。

「どうした!?」
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