夕闇の時計店
明るくなり、反射的に目を瞑る。

「……誰だ」

緋瀬さんの警戒するような声に目を開く。

私を庇うようにして立っている緋瀬さんの前方にいたのは……

「衣月。こんな時間まで何してたんだ」

若々しい顔を怒りに染める父だった。

「お父さん……なんで……」

「お父さん……!?」

驚いた緋瀬さんが私を振り向き、応えるように頷く。

「おや、君にお父さん呼ばわりされるのは嫌だな」

「あのっ」

「衣月の居場所はスマホのGPSで解ったよ。だが、姿はない、荷物は置き去り……急に外から戻ったかと思えば着物姿。祭りにでも行っていたのか?衣月、なんで連絡をしなかった。その男は何だ?早く離れてこっちに来なさい」

戻らないといけないのは分かっているのに、自然と首は横に振られた。

「すみません……衣月さんを帰すのが遅くなってしまって。俺は……」

「君には何も聞いていないよ。強いて言うなら……二度と私の娘に関わらないでくれ」

「!?お父さん!」
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