ほわいとちょこれーと!─幼馴染みと恋するホワイトデー
 私は引き出しを開けてお小遣いの入ったミントグリーンの財布を引っ掴むと制服のまま部屋を飛び出した。

 玄関で靴を履きながら、靴箱の上のキーラックから自転車の鍵を取る。


「行ってきます!」


 ドアを駆け出し、自転車を外に出すのももどかしく飛び乗って走り出した。


 目指すは自転車で行ける範囲で一番大きいショッピングモール。


 国道に向かう平坦な道をただひたすらペダルを漕ぐ。

 前へ前へ…

 国道に突き当たるとそれを渡って右に曲がり、夕間暮れの交通量の多い道を東へと進む。緩い上り坂を私は懸命に漕ぐ。

 坂を上り切るとここからは急な長い長い下り。冷たい風を切って自転車は転がるように駆け下りてゆく。


 坂を下り切った大きな交差点を越えるとそこはもうショッピングモールだ。

 ここまでの時間20分。

 私は駐輪場に自転車を置くと店に駆け込んだ。


 お菓子やさんの並ぶエリアを急いで、でも一軒一軒注意深く見て回り、結局地元で人気の洋菓子店の透明のケースに小さな色とりどりのキャンディが入ったのを買った。

 友達が多くて、いろんなタイプの人がいるクラスの中でも誰からも好かれていつもみんなに囲まれている千早。

 そんな千早にどこか似ている、と思ったから。
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