ほわいとちょこれーと!─幼馴染みと恋するホワイトデー
「!!」
キーンコーンカーンコーン…
始業を知らせるチャイムが鳴る。
(どうしよう…)
ドキドキと心臓が激しく打ち鳴る。
(ミサトの好きな人がまさか千早だったなんて…)
「どうしたの?瑚子。チャイム鳴ったよ?」
「あ、うん…」
レイラの声に我に返って、一旦は窓際の自分の席に着く。
でも心はここにあらずのまま…
(千早はミサトに何て返事するんだろう…)
こんな教室の、誰かが見てても不思議じゃないところでのまるで公開告白。
千早は何かしらミサトに返事をすることになるだろう。
それを思うと胸がきゅっと締め付けられる。
千早を見ると、私の気持ちなんて全く気付かないで廊下側の自分の席で後ろの席の男子と楽しそうに話していた。
幼馴染みで、ずっとなんとなく近くにいるものと思ってた。
千早のこと、いっぱい知ってると思ってた。
けど、好きなのにバレンタインのチョコはいつも渡せないみたいに、ホントは私、千早が今何を思ってるかとか、千早の本当の気持ち全然分かんないんだ…
(千早が、遠いよ…)
後ろを向いていた千早がふとこちらに気付いた。
(あ…)
眼を逸らし損ねているうちに、千早はこちらに向かって人懐っこい笑顔で片手を挙げる。
(千早…)
ドキドキしながらもそれが嬉しくて、手を挙げ返す。
いや、返そうとした。
私より早く手を挙げたのは…
千早と私のちょうど間に座るミサトだった。
* * *