ほわいとちょこれーと!─幼馴染みと恋するホワイトデー
3月14日、朝。
鏡の前の私は腫れぼったい瞼をしている。
泣き過ぎたのと寝不足で頭痛もする。
(学校行きたくない…)
いっそ風邪でもひいてないかと熱も計ってみたけど、あいにく健康そのものだった。
重い身体を引きずるように登校した私は、自分の席に着きバッグから取り出した教科書やノートをのろのろと机の中に収めていた。
(千早に顔合わせたくないな…)
そう思っていた矢先、頭の上で聞き慣れた声がした。
「瑚子、おはよー」
「!!」
眼の前には千早が立っていた。
そしてこちらに右手を差し出す。
手のひらには白地に淡いピンクの花びらが散ったような柄の包装紙で包まれた小さな箱が乗っている。
「こないだのお礼」
「こないだ…?」
「ほら、バレンタインの」
「え…」
「瑚子たち3人で作ったんだろ?だから三つ持ってきた」
千早は箱を二つ掴んだ左手を見せた。
(千早、勘違いしてる…)
同じに見えるけれどあのチョコはミサトのものであって私のじゃない。
結局私は千早に何もあげられてないんだ。
「はい、これ」
「……」
私は千早からお礼をもらう権利はない。
「瑚子?」
ガタンッ!
私は席を立ち上がる。
「私…ちょっと用事思い出した」
言うなり席から離れ、走り出した。
「瑚子!?」
千早の声が背中に追い掛けてくる。けれど構わず教室を駆け出す。
『そのチョコはね、3人じゃなくてミサトが作ったんだよ』
そう言わなきゃいけなかったんだ。
でも…
できなかった…
千早にずっと傍にいて欲しいのに、たくさんの人の中からいつでも私だけを見つけ出して欲しいのに…
(ミサトにも、誰にも盗られたくない…)
こんなことを思う自分が酷く醜かった。
結局私はこの日頭痛を訴えて保健室に行き、教室には戻らないまま早退した。
夜、ミサトからラインが来た。
『千早くんからクッキーもらった☆』
一緒に送られてきた写真には例のピンクの花びらの包装紙と小箱に収まった円やハートやダイヤの形の可愛いクッキーが写っていた。
* * *
鏡の前の私は腫れぼったい瞼をしている。
泣き過ぎたのと寝不足で頭痛もする。
(学校行きたくない…)
いっそ風邪でもひいてないかと熱も計ってみたけど、あいにく健康そのものだった。
重い身体を引きずるように登校した私は、自分の席に着きバッグから取り出した教科書やノートをのろのろと机の中に収めていた。
(千早に顔合わせたくないな…)
そう思っていた矢先、頭の上で聞き慣れた声がした。
「瑚子、おはよー」
「!!」
眼の前には千早が立っていた。
そしてこちらに右手を差し出す。
手のひらには白地に淡いピンクの花びらが散ったような柄の包装紙で包まれた小さな箱が乗っている。
「こないだのお礼」
「こないだ…?」
「ほら、バレンタインの」
「え…」
「瑚子たち3人で作ったんだろ?だから三つ持ってきた」
千早は箱を二つ掴んだ左手を見せた。
(千早、勘違いしてる…)
同じに見えるけれどあのチョコはミサトのものであって私のじゃない。
結局私は千早に何もあげられてないんだ。
「はい、これ」
「……」
私は千早からお礼をもらう権利はない。
「瑚子?」
ガタンッ!
私は席を立ち上がる。
「私…ちょっと用事思い出した」
言うなり席から離れ、走り出した。
「瑚子!?」
千早の声が背中に追い掛けてくる。けれど構わず教室を駆け出す。
『そのチョコはね、3人じゃなくてミサトが作ったんだよ』
そう言わなきゃいけなかったんだ。
でも…
できなかった…
千早にずっと傍にいて欲しいのに、たくさんの人の中からいつでも私だけを見つけ出して欲しいのに…
(ミサトにも、誰にも盗られたくない…)
こんなことを思う自分が酷く醜かった。
結局私はこの日頭痛を訴えて保健室に行き、教室には戻らないまま早退した。
夜、ミサトからラインが来た。
『千早くんからクッキーもらった☆』
一緒に送られてきた写真には例のピンクの花びらの包装紙と小箱に収まった円やハートやダイヤの形の可愛いクッキーが写っていた。
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