転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 その様子をにこにこと見守る皇妃は、ほとんど口を開かないと思っていたら、三つ目のおにぎりに手を伸ばしていた。

(ほら、一緒に食べるご飯はおいしいって……)

 皇妃の顔を見ていると思い出す。

 もう会うことのできない両親や祖母、そしてずっと以前に亡くなってしまった祖父の顔を。

 気がつけば、おにぎりはすべて皆の胃の中におさまっていた。甘い卵焼きも慣れればおいしく、鶏の唐揚げも好評だった。

 最後に残ったハンバーガーをリヒャルトが手に取った時だった。

「ここで何をしている?」

 声の方を振り返ったヴィオラは、座ったまま飛び上がりそうになってしまった。

 中庭を皇帝が診ていたのだ。皇帝と対面したのは、あの晩餐会が最後だったヴィオラは首をすくめる。あまり、近くに寄りたい相手ではない。

「今日は天気がいいので、ここで昼食にしておりました、陛下」

 にっこりと笑った皇妃が立ち上がり、皇帝に向かって頭を下げる。リヒャルトとセスも素早くそうしていたので、慌ててヴィオラも彼らに倣った。

「そうか、いや、しばらくこちらの様子を見ていなかったからな。元気にしているか」

「おかげさまで、健やかに過ごしております」

 と、また皇妃はにっこり。

 そうか――と皇帝は言うなり、くるりと向きを変えて行ってしまった。

(陛下は、なにがしたかったんだろう)

 そう思ったけれど、ヴィオラにはその謎を解くことはできないのだった。
< 108 / 225 >

この作品をシェア

pagetop