転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
この気持ちは育ててはいけない
　オストヴァルト帝国に来てからのヴィオラの生活は平穏そのものだった。

　きちんと教師がつけられ、同じ年頃の少女達と一緒に授業を受ける。明確に学校という形ではないけれど、学校教育を受けているのとほとんど同じだ。

　その日も授業を終え、急いで部屋に戻ってニイファとお茶を飲もうと急ぎ足に廊下を歩いていたヴィオラが呼び止められたのは、アデリナ皇妃との交流が始まってからひと月ほどが過ぎた時のことだった。

「――そなたがヴィオラ？」

「は、はい……ティアンネ二妃殿下」

　ティアンネ妃がここにいるのに驚いた。彼女の側には、リンデルトが付き添っている。

（なんで、ティアンネ妃がここにいるんだろう……）

　招かれた教師から授業を受けているのは、クィアトール宮の一室だ。この宮は、妃達が暮らしている建物からは少し離れたところにある。

　慌てて、スカートをつまみ、ヴィオラは正式な淑女としての礼をする。

「……ここは、公式の場ではない。ティアンネ妃と呼ぶことを許そう」

「こ、光栄です。ティアンネ妃殿下」

　頭を下げながらも、ちらりと思う。

（序列を外して呼びなさいって言ったということは、やっぱり二番目なのが嫌なのかな……？）

　ティアンネ妃は、現在皇帝の妃達の中で二番目の地位を与えられている。最上位はもちろんアデリナ皇妃だ。

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