転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 火鉢の上に薬缶を置いておけば、いつでもあたたかいお湯が手に入るし、乾燥しがちな部屋の空気を潤してくれる。

 たっぷり用意したはずなのに、昼食はあっという間になくなってしまった。

「ヴィオラ、今日もおいしかった。ありがとう」

「いえ、気に入ってくれたならよかったです」

「少し歩きましょうか。リヒャルト、あなたも一緒にいらっしゃい」

 にこにことしながら、皇妃はヴィオラを誘う。

 その声にも、以前よりずっとはりが出ているような気がする。ヴィオラと皇妃が並んで歩き、少し離れたところをリヒャルトが歩く。さらに目立たない位置からセスが警護についていて、皇宮の中でも注意は怠らない。

(やっぱり……病は気からってことだったのかも)

 並んで歩いて様子をうかがうと、以前より頬がふっくらしている。血色もよくなっていて、年齢相応の美しさを取り戻しつつあった。

「あなたには感謝しなければいけないと思っていたの。最近、リヒャルトも満月宮に戻ってきてくれることが増えたし……あなたがそうするように言ってくれたのですってね。食事がこんなにおいしいなんて思えたのは久しぶりだわ」

「それなら、よかったです」

 皇妃が、少しでも元気になってくれたのなら、よかった。

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