転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 あれから数日。

 ヴィオラのところに来て事情を説明してくれているリヒャルトは、悔しそうな表情になる。本当にヴィオラを誘拐した黒幕が見つからなかったことを悔しがっているようだ。

「でも、わかったこともあります。イローウェン王国の者達でしょう。服装が、イローウェン王国の者でしたから」

 セスがそう言う。

「ヴィオラ様を、連れ戻そうということではないのですか? 国王は、ヴィオラ様を帝国に送るのは反対だったと聞いていますし」

「それはないと思うの。だって……」

 口を開きかけたけれど、自分の国のことを外で話していいものかどうかわからない。ヴィオラだけが前王妃の娘であり、王太子である異母兄と第二王女の異母妹は今の王妃であるザーラの子供だ。

 ヴィオラがひとり疎まれて育ったのだと、この人達の前で話していいものかどうかわからない。

「その、私を連れ戻したら、帝国は私の国に対して怒るでしょ? そもそも、最初に私がここに来なくてはならなくなった理由も、戦があったからだし……そこはお父様も割り切っているというか、うん、人質を送ること自体は反対していないと思うの」

「ですが、帝国が間に立ったのを面白いとは思っていないでしょう。帝国に対して、戦をしかけるつもりかもしれない」

 こちらを見るセスの目が、鋭さを増した気がした。彼の目に呑まれそうになって、ヴィオラは唇を噛む。問題は、そこではないのだ。

 ヴィオラはイローウェン王家で浮いてしまっている。それを今、彼らの目の前で認めたくはなかった。

(……お継母様というわけではないわよね……?)

 ヴィオラに危害を加えたいと思っている人間なんて、ひとりしか心当たりはない。父は、ヴィオラに対してはあまりにも無関心だった。

 ヴィオラを国元に取り返した後、帝国に反旗を翻すなんてことはあり得ないし、そもそも、取り返したいと思って誘拐したのであれば、あの雑な扱いは説明がつかない。『大切な王女』だというのであれば、もう少し丁寧に扱われたと思う。

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