転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 異母妹の方が数も多く、贅をつくした品が多かったとはいえ、毎シーズンごとにきちんとドレスも新調してもらっていたし、国内の貴族達の目の前でヴィオラを虐げているのが明らかになるような行動はとらなかったと思う。

 ヴィオラの周囲に人がいなかったとはいえ、目に見えて粗雑に扱われているということはなかった。

「私が気に入らないのは間違いないけど、私を利用するつもりもあったんだと思うの。今回、こうやって私が来たのだって、私の有効活用でしょ? 異母妹を人質にしなくてすんだんだし、私は自分の目の届かないところで帝国に監視してもらえるし」

 もし、記憶を取り戻す前の『ヴィオラ』にもう少し気概があったなら、自分で忠実な家臣を募り、兵を集め、正妃の娘としての地位を取り戻そうとしたかもしれない。

 けれど、『ヴィオラ』にそのつもりはなかった。無駄な争いを起こすくらいなら、自分が冷遇される方がまだましだと彼女は思っていたのだ。

 それに、ヴィオラにしてもザーラの目の届かないところにいれば楽に呼吸することができる。それだけでもありがたかった。

「わざわざ、私を取り戻して、王太子につけようなんて人、いないと思う。お継母様が私を好きじゃないだけで……その、なんて言えばいいのかな。お異母兄様や、異母妹の地位を脅かすような真似をしなければ、見逃してもらえるというか……」

 少なくとも、ザーラを追いやり、ヴィオラを王太子として立てたい貴族がいれば、もっと早く手を打っていたと思うのだ。

 ヴィオラが国外に人質として出される前ではなく、国内にいる間の方が動きやすい。

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