転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
ちょうどオーブンからパウンドケーキを取り出そうとしていたヴィオラは、ニイファが連れてきたのがリヒャルトであることに気づいて戸惑った。
今日の午後、皇妃のところで一緒にお茶を飲む予定だったのに、どうしたのだろう。
「ヴィオラ、今日のお茶会は中止だ」
セスなり他の侍従なりを使いに出せばよさそうなものなのに、リヒャルトは開口一番、そんなことを言う。
「そうですか、残念ですけど……」
「それで、君に話がある。すぐに、荷物をまとめて、満月宮に移ってくれ。ニイファも一緒に。部屋は用意してあるし、父上の許可もいただいてある」
「何かあったんですか? 私を満月宮に連れて行ってどうしようというんです?」
けれど、リヒャルトはこの場で説明してくれるつもりはなさそうだった。
「先日、誘拐されかけただろう。とても心配した母上が、君を手元に引き取りたいと言い出してね。母上の願いだから、拒否権はないと思ってくれ」
「でも、今さら――」
抗議しかけたヴィオラの唇にリヒャルトは人差し指を押しつけ、それから先の言葉を封じてしまう。
(……裏がありそう)
ヴィオラが誘拐されかけたのは二週間も前のこと。それなのに今ヴィオラを引き取ろうというのだから、たぶん、別の事情があるんだろう。
ちらりとニイファの方に目をやったら、黙って首を縦に振る。
今日の午後、皇妃のところで一緒にお茶を飲む予定だったのに、どうしたのだろう。
「ヴィオラ、今日のお茶会は中止だ」
セスなり他の侍従なりを使いに出せばよさそうなものなのに、リヒャルトは開口一番、そんなことを言う。
「そうですか、残念ですけど……」
「それで、君に話がある。すぐに、荷物をまとめて、満月宮に移ってくれ。ニイファも一緒に。部屋は用意してあるし、父上の許可もいただいてある」
「何かあったんですか? 私を満月宮に連れて行ってどうしようというんです?」
けれど、リヒャルトはこの場で説明してくれるつもりはなさそうだった。
「先日、誘拐されかけただろう。とても心配した母上が、君を手元に引き取りたいと言い出してね。母上の願いだから、拒否権はないと思ってくれ」
「でも、今さら――」
抗議しかけたヴィオラの唇にリヒャルトは人差し指を押しつけ、それから先の言葉を封じてしまう。
(……裏がありそう)
ヴィオラが誘拐されかけたのは二週間も前のこと。それなのに今ヴィオラを引き取ろうというのだから、たぶん、別の事情があるんだろう。
ちらりとニイファの方に目をやったら、黙って首を縦に振る。