転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ

「満月宮でも厨房は使えますか？」

　ヴィオラの言葉に、リヒャルトは驚いたように目を見張ったけれど、次の瞬間には彼の表情が柔らかくなる。ヴィオラの意図を汲んでくれたみたいだ。

「もちろん。君の作ってくれる珍しいお菓子が目当てのところもあるからね」

「よかった。あのですね、今日、ケーキを焼いたんです。ミナホ国の食材を使って。支度をしている間に冷めると思うので、一緒に持っていきましょう」

　ここでは、あまり大げさに騒がない方がいい。

　リヒャルトがヴィオラを迎えに来たのが大げさと言えば大げさだけれど、皇妃の「お気に入り」だと使用人達の前で印象づけておけば、ごまかせる範囲だ。

「ヴィオラは本当に気が利くな。母上が手元に置きたがるのもわかる気がする。俺はすぐに馬車を用意して戻ってこよう」

　リヒャルトは、来た時同様、あわただしく出て行ってしまった。

　ニイファは首を傾げたけれど、今、この場でヴィオラに問いただすことはしないと決めたみたいだった。使った調理器具を大急ぎで洗い始める。