転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 招待客全員を巻き込んだとしても、皇帝に危害が及ばないことを前提とした計画だったならば、あの時毒キノコを紛れ込ませた人物は、この国の中枢にとても近い位置にいることになってしまう。

「――皇妃様は、キノコのポタージュはお好きなんですか?」

「特に好むというわけではないが、食欲がなくても、ポタージュなら飲みやすいから普段なら完食していたと思う」

(だとしたら、あの時、一番被害の及ぶ可能性が高かったのって、皇妃様なんじゃないかな……)

 食中毒などの場合、同じ食事を口にしていたとしても、症状が重い人とそうではない人に分かれることがある。

 それは、体内に取り入れた量や、食べた人の体力しだいで変わってくるそうだ。抵抗力の違いと言ってもいい。

 今は比較的落ち着いているけれど、あの頃の皇妃はとても弱っていた。もしも皇妃がポタージュを全部飲んでいたならば、確実に影響が出ていた可能性は高い。

 でも、そうなると誰が皇妃を退けたかったのか。浮かんでくる名前はとても限られたものになってしまう。

「もちろん、母上だけを狙ったものではない可能性もある。君だって誘拐されたのだからな」

「あ、そうですね……私を狙ったという可能性もありますよね」

 誰が、なんのためにというのはわからないし、ひょっとしたら、被害妄想が過ぎているだけかもしれない。

 けれど、この国に来る途中で襲撃されたこと、そして先日誘拐されたことを考え合わせれば、狙いはヴィオラだった可能性もある。年齢より小柄だということを考え合わせれば、体内に毒が入った時、成人より重症化してもおかしくない。

「だから、君にはこの宮に滞在してもらう。母上と一緒に過ごした方が、君も安心だし、母上も、君がいてくれると気持ちが明るくなるようだからな」

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