転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「おにぎり用の海苔と、お菓子を作るために小豆も買いましょう。あとは……ベーコンが欲しいです。ジャガイモと玉ねぎと一緒にバターで炒めて、ローズマリーで香りをつけて」

「それはうまそうだ。楽しみだな」

　市場にはたくさんの食材が並んでいて、本当にこの国は豊かだとヴィオラは思う。リヒャルトと一緒にいるからか、心の中までぽかぽかとしてくるみたいだ。

「ヴィオラ、ちょっと待ってくれ」

　不意にリヒャルトが足を止めたので、ヴィオラもそれに倣った。

「どうしました？」

「あそこにいる男、厨房の料理人だった者だ。なぜこんなところに」

　言うなり、ヴィオラを連れてリヒャルトは男の方へと向かう。ふたりの姿を見た男は、木箱を移動させているところのようだった。

　リヒャルトに声をかけられ、彼は観念したかのように足を止める。

「お前、宮廷の料理人だっただろう。なぜ、こんなところにいるんだ？」

「で――殿下、何か御用ですか」

「料理人のお前が、どうしてこんなところで市場の下働きをしているのかと聞いているんだ」

　よくよく彼の様子を見てみれば、どう見ても宮廷の料理人ではない。

　粗末な衣類に身を包み、大きな樽を動かしたり、荷物を運んでいたりしているところから、市場で肉体労働者として働いているようだ。

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