転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「首になったんでございますよ、殿下。ソメカイタケとマッシュルームの区別もつかないような料理人はいらない、と」

 吐き捨てるような口調で、彼はそう返事した。

 リヒャルトが顔を覚えているくらいだから、厨房の料理人の中でも高い地位だったはずだ。だが、一度失態を犯せばあっさりと切り捨てられる。そういうことなのだろうか。

「俺は、そこまでは言った覚えはないぞ。父上も、下働きからやり直すようにと命じたはずだ」

「いえ、もうひとつ。常に視線を感じていたのでね。首になった方が落ち着きましたよ」

 リヒャルトの表情が変わるのをヴィオラは見た。唇をぎゅっと結び、険しい顔になる。

「常に視線を感じていた、だと?」

「俺が何かしないか観察してたのかもしれませんがね。いつ消されるかとひやひやしてましたよ。だから、こっちの方が気楽です」

(……それって、私もわかる気がする)

 国にいた頃、ヴィオラもいつもひやひやしていた。

 この料理人も同じように感じていたのだとしたら、きっとそう感じるだけのなにかがあったのだろう。

「では、あれからなにか思い出したことはないか?」

「特にありません、殿下」

 問われても、元料理人は何も思い出せないようだ。そんな彼の様子を見ていて、ヴィオラは閃いた。

 ひょっとして、根底から間違っているんじゃないだろうか。

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