転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「リヒャルト様、私、どうですか？」

「ああ、可愛いな。これは俺からプレゼントだ」

「わあ！」

　リヒャルトがヴィオラに贈ってくれたのは、一人前の淑女が身に着けるような白いレースの手袋だった。

　一瞬とまどったけれど、ヴィオラはすぐに嬉しくなり、彼の前でぴょんぴょんと跳ねてしまう。

「とっても嬉しいです、リヒャルト様！　ありがとうございます！　でも……もらってしまっていいんですか？」

「今日の準備を頑張ってくれたお礼だから気にするな。子供が好みそうなものがわからなくて、出入り商人に相談したんだが、気に入ってくれたならよかった」

　子供、とリヒャルトが口にするたびにいたたまれない気持ちになる。この国では十五歳が成人とされている。ヴィオラの祖国もそうだ。

　前世の分を加味すれば、精神的には成人していると言ってもいいのかもしれないけれど、結局のところ、外見の年齢ですべてを判断されてしまう。

（だって、転生してきたなんて、誰に言っても信じてもらえないだろうし……）

　ちょっぴり落ち込んだヴィオラに素早く気がついたのは、リヒャルトの側近であるセスだ。このところ、セスはあちこちお使いに出ていて、ヴィオラは彼と顔を合わせることはほとんどなかった。

「ヴィオラ様は子供ではありませんよ。年齢のわりに大人びたところをお持ちです」

　ニイファが間に入ってくれたけれど、リヒャルトは表情を緩めただけだった。

「でも今そこでぴょんぴょんしていたぞ。あんな風に跳ねて回るのは子供だろう」

（……それは、ついうっかりで）

　ヴィオラは心の中で弁解した。

　つい、うっかり、感情のまま行動してしまった。一人前の女性ならば、こんなところで跳ねないことくらい、ヴィオラだってちゃんとわかっている。

　身体の年齢と、心の年齢がいまひとつ釣り合っていない。

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