転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
　ヴィオラが水を持って入ると、そこには皇帝、皇妃、そして皇妃と似た正装を身に着けたティアンネ妃がいた。

　ヴィオラの入室に気付いた皇妃が、こちらに向かって目元を柔らかくして微笑みかけてくれる。リヒャルトに頼まれ、皇妃の様子を見るためにここに来たけれど、さほど心配する必要はなさそうだ。

「皇妃陛下

はご病気だとうかがっていたのですが……出席できるのですか」

「ええ……体力が回復する自信がなかったのです。でも、息子のおかげで思っていたよりずっと早く回復することができましたわ」

　苛立ちを見せるティアンネ妃に対し、アデリナ皇妃は余裕の表情だ。悔しそうに、くっとティアンネ妃が喉の奥で唸った。

　ティアンネ妃が口を開こうとした時、その場の空気を変えたのは皇帝だった。

「皇妃が儀式を執り行えるというのであれば、皇妃にやってもらうのがいいだろう。帝国の母でもあるのだからな」

「――はい、陛下」

　どうやらこの部屋にいる三人は、ヴィオラのことなど目に入っていないらしい。

　ヴィオラは、自分の持ったトレイを手近なテーブルにそっと置き、なに食わぬ顔でその場に残った。

「お水をいただけるかしら？　緊張しているみたいで、喉が渇いてきたわ」

　ヴィオラに向かい、皇妃がそう命じる。丁寧に一礼したヴィオラは、グラスに水を注ぐ。今、この部屋にいるのは三人だから三つのグラスを用意し、まずは皇帝に運ぶ。

< 177 / 225 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop