転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「もらっておこうか」

　皇帝がグラスを取り上げるのを見て、今度は皇妃の方へと向かった。それから、ティアンネ妃に背を向けるようにして皇妃にグラスを渡す。

　皇妃がヴィオラの目を見つめて、グラスを手に取った。そして、ヴィオラは最後にティアンネ妃の方にグラスを運んでいく。

「ティアンネ妃殿下、お水はいかがですか？」

　今の会話は何一つ聞いていませんという顔をして、ティアンネ妃にグラスを渡す。そして、受けとったティアンネ妃の方も、ヴィオラには見向きもせずにそのグラスを口に運んだ。

　冷たい水は、彼女の喉を潤すのにちょうどよかったらしい。一息にグラスをあけた彼女は、空になったグラスをトレイの上へと戻した。

「では、行こうか。ティアンネ、今日までのそなたの厚意には礼を言う。あとで褒美を取らせよう」

「とんでもございません、陛下。リゾルデ豊穣祭を滞りなく行うのが、なにより大切ですもの」

　ティアンネ妃はうやうやしく頭を下げ、皇帝と皇妃を見送る。

　皇帝と皇妃が遠くに行くのを待って、ティアンネ妃は荒い足音を立てながら部屋の外に出て行った。

　ヴィオラはティアンネ妃のあとを追った。ひょっとしたら、彼女が自分の心情をどこかで明らかにするのではないかと思ったのだ。

　どすどすと廊下を歩いていったティアンネ妃は、神殿の奥にある部屋へと入った。

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