転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「どうして、この子供がここにいるのかしら？」

「私が呼びました、ティアンネ二妃」

「あら、そう、なの……」

　リヒャルトが自分のことを『私』と言うのは初めて聞いた。それに、ティアンネ妃のことを、序列をつけて二妃と呼んだ。

　そのことが、これからおこる出来事が、重大なことだと伝えてくるようだ。今までリヒャルトが、明確にティアンネ妃を皇妃の下に置いたことはなかった。

　皇帝と皇妃は儀式の衣装のままでそこにいた。ヴィオラは、彼らに向かって深々と頭を下げた。

　皇帝の合図があるまで、ヴィオラは頭を上げることができない。

「頭を上げよ。その娘、どこかで見た顔だな。リヒャルトよ」

　皇帝は、顔を上げたヴィオラに見覚えがあるようだった。皇帝と直接顔を合わせたのは、あの晩餐会の時だけ。

　あの時、ヴィオラのことをきちんと覚えていたというのだろうか。

「ヴィオラ、こちらへ」　

　ヴィオラは、緊張した面持ちで、こちらに向けて手招きしているリヒャルトの方へと向かう。

「リヒャルト様、これは……？」

　小声で問いかけるけれど、リヒャルトは答えてくれるつもりはなさそうだった。

　ただ、ヴィオラの肩に手を置き、力づけようとしてくれているみたいに、その手に力がこもる。

　不安に揺れるまなざしで、ヴィオラは周囲を見回した。

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