転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「今宵は、アデリナのところで過ごそうと思うのだが……皇妃は、大切にしなければならないからな」

「は、はぁ……」

　リヒャルトもどうにもしまらない返しをしていたけれど、それもしかたないと思う。だって、今さらアデリナ皇妃のところに来てどうしようというのだろう。

　今さら来るくらいなら、もっと早くにきちんと向き合えばよかったのに。

「陛下！」

「わが宮にはおいでいただけないのですか？」

「そなた達の宮に行く時間は、また改めて作ろう。行くぞ、リヒャルト」

　引き留めようとする妃達には手を振り、リヒャルトを促して皇帝は歩き始める。ヴィラは二人のあとをついて歩き始めた。

「今日は、アデリナをいたわらなくてはならないからな。ティアンネの嫌がらせに、よく耐えてくれた」

　それは、先ほどヴィオラの脳裏に浮かんだ疑問の答えではあったけれど、あれを嫌がらせの範疇で済ませてしまうのはどうなんだろう。明確に殺意を持っていたとしか言えないではないか。

「アデリナも、余が行けば喜んでくれるだろう」

　そうリヒャルトに言う皇帝は、とても満足した様子だった。

　けれど、戻ってきた一行を出迎えたアデリナ皇妃の反応は、皇帝が期待していたものとはまるで違っていたらしい。

「まあ、陛下。どうなさったのですか？」

　今の満月宮の様子は、この宮に皇帝が帰ってくるなんて誰も考えていなかったということを如実に表してしまっている。パーティーの準備をしたヴィオラもそうだった。

< 193 / 225 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop