転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「満月宮に来るのが楽しみで仕方ないよ」

「あらまあ陛下。あまり食べすぎては身体によくありませんよ。お腹周りのことも心配なさらなくては」

 ころころと笑う皇妃は、完全に皇帝を手の上で転がしている。

 リヒャルトはそんなふたりの様子に、少し居心地が悪そうだ。

「ところで、ヴィオラ姫。なにか願いはないか? 姫の働きには、きちんと報いなければならないからな」

 これは、皇帝から好きなものを褒美に与えると言われたのと同じ意味だ。皇帝個人で叶えられる範囲であれば、どのような願い事でも叶えてもらえるだろう。

「国に帰りたければ、帰してやろう。イローウェン王国は、そもそもこの国に反抗的というわけでもないからな。そうしようか」

 ――帰国させられるのは困る!

 普通の状況なら、きっと両手を上げて喜んで受け入れるべき時だ。皇帝の申し出はとても寛大なもので、ヴィオラはそれを断るべきじゃない。それもちゃんとわかっているけれど、断らざるを得なかった。

「陛下――ありがとうございます。とても、嬉しいです。でも、私……帰りたくありません」

「帰りたくない、だと? それは、皇族に取り入ることができたからか?」

 皇帝が眉を上げた。たしかに、皇妃にこれだけ可愛がられていれば、皇族に取り入ることに成功したと思われても当然だ。

 だが、ヴィオラが国に帰りたくない理由はほかにもある。

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