転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ

「ち、違います、陛下。か、帰りたくないのは――」

　どうしよう。どう言ったら、皇帝の不興を買わずにこの場を乗り切ることができるだろう。

「わ、私が帰りたくないのは、ご飯がおいしいからです！」

　自分の口から出てきた言葉に、ヴィオラは赤面した。ご飯がおいしいから帰りたくないって何事だ。

　たしかに、こちらの国に来てからずいぶんおいしいものを食べられるようになったけれど、それをこの場で口に出すなんて。

「ご飯――食事のことか」

　皇帝は、ヴィオラの言葉を聞いてくれるつもりはあるようなので、どうやって皇帝を納得させようか、ヴィオラは懸命に考えながら続ける。

「そうなんです、陛下！　私、お料理が大好きで……この国で学ぶことがたくさんあると思うんです！　ですから、『まだ』帰りたくありません」

「だめよ、困るわ」

『まだ』帰りたくないと強調したヴィオラに重ねるように、皇妃が口をはさんだ。

「私、ヴィオラ姫の後見役になろうと思っているのです。彼女の持っている知識は得難いものですもの。彼女の頭の中で、まだまとまっていないものも多いようですが」

　おそらく、皇妃が考えているのは、ヴィオラの持っている前世の知識。