転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「おいしいご飯を食べているからかもしれません、陛下」

「たしかに、そなたの考える料理はうまい」

「そうじゃないんです、陛下。皆で食べるご飯って、とてもおいしいんです。皇妃様は、ずっとひとりでご飯を食べていたみたいで」

『食事をする』ではなく『ご飯を食べる』とあえて子供じみた言葉を選ぶ。もちろん、今のヴィオラは子供だし、その方が皇帝にも自然に受け取ってもらえるような気がして。

「私も、そうです……アデリナ皇妃様が、一緒にご飯を食べようって言ってくれて嬉しかった、です。陛下もそうは思いませんか? 皆で食べるご飯はおいしいって」

「皆で食べるご飯、か。余には縁のない言葉であったな」

 皇帝が妃と食事をすることはあっても、こんな風に和気あいあいというものではない。しんとした部屋の中で、妃とその妃の産んだ子供達と食事をするだけ。

 妃は、皇帝の寵愛を得るのに必死だから、皇妃との食事とはまるで違うのだろう。

「リヒャルト様も、アデリナ様と一緒にいて幸せなんだと思います。おいしいご飯は、家族円満の秘訣なんですよ?」

 おいしいご飯とは、調理の腕だけをさすんじゃない。ちょっと肉がじゃが焦げていても、から揚げがあげすぎでも。

「ごめん、次は失敗しないようにするから」

「大丈夫だよ。このままでも十分おいしい」

 そんな会話があれば、和気あいあいと過ごせるのだ。少なくとも、前世の家族はそうだった。

 皇帝と妃達の間に根本的に欠けていたのは。食卓を楽しいものにしようとする意志なんじゃないだろうか。

(たぶん、すごく難しいとは思うんだけど……)

 そこに皇帝一族ならではの、威厳のようなものだって絶対必要だから。

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