転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 その日の夜、ヴィオラはベッドに横になって考え込んでいた。

(……これで、一件落着、かな……)

 アデリナ皇妃はもう望んでいないとはいえ、皇帝が皇妃を重視する立場をとるのだとしたら。

 リヒャルトの地位は、ますます安定したものとなっていくのだろう。それはよろこばしいと素直に思う。

 それよりも今、ヴィオラが怖いのは。

(これから、ティアンネ妃がどう出てくるかなのよね……)

 謹慎から戻ってきたところで、皇帝のお気に入りの座を取り戻すことはできないだろう。皇帝が、皇妃との距離をつめたいと口にしたのがその証拠だ。

 ただ、ティアンネ妃も、この皇宮で二十年近く生きのびた人だ。彼女の手足となる人物は、きっとあちこちにいる。

(ううん、協力者が誰もいないって方が不自然だと思う……)

 今は、表に出てきていないだけで、きっと、協力者は存在するのだろう。

 それが、どこの誰なのかヴィオラに探り出すすべはないけれど。

(やめやめ。考えてもしかたないし……)

 そんなことよりも、もっと楽しいことに頭を使った方がいい。

 扉一枚隔てた向こう側の部屋には、ニイファがひとりで寝ている。

 ニイファも、本当によくやってくれている。

 今の今まで、ヴィオラがなんとかやってこれたのは、ニイファの手腕によるところが大きい。

(ニイファにも、お礼をしたいわよね。新しいドレスとかどうかな……?)

 こういう場合には、主がドレスを下げ渡すものだが、ヴィオラの方が圧倒的に小柄なので、ニイファにおさがりできるドレスはない。

 今までの働きのお礼を皇妃からたくさんもらっているし、ニイファに新しいドレスを仕立ててあげようか。

 それがいい――と暗闇の中、ヴィオラがひとり微笑んだ時だった。

< 209 / 225 >

この作品をシェア

pagetop