転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 かたり、と部屋の中のどこかから小さな音がしたような気がする。音を立てるようなものはこの部屋には置いていない。

 いったい、何があったのだろう――気のせいか? 暗い中で目を瞬かせて考え込む。

 だが、気のせいではなかったことはすぐに判明した。ひやりとした夜の空気が、ヴィオラの頬を撫でていったから。

 リゾルデ豊穣祭は、秋も終わりの時期に開かれる。だから、豊穣祭が終わってしまえば、すぐに真冬の寒さになる年も多いのだ。

 ヴィオラの頬を撫でていった空気は、あまりにも冷たく、窓が開けられたのだと推測できる。ひそやかに床の上に降り立つ足音が続く。

「だ、誰……? 誰かいるの……?」

 ベッドに身を起こし、こわごわと問いかけた。呼吸がせわしなくなっているのが自分でもわかる。

 窓から降りた足音が、こちらへと近づいてくる。ベッドの上で身体をずらし、足音から距離をあけようとする。

「まさか、起きていたのか。音をたてないように入ったつもりだったんだけどな」

「……セス?」

 その声は、リヒャルトの忠実な部下であるセスのものだった。

 けれど、彼がなぜ、こんな深夜にヴィオラの部屋に押しかけてきているのだろう。

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