転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「……ニイファは?」

 馬車が湖に落ちた時、ニイファはヴィオラだけを馬車から外に出してくれた。

 自分は窓からは逃げられない、と。

 結果として、ヴィオラは湖に放り出され、溺れることになったわけだけれど――ニイファが自分を守ろうとしてくれたことくらいわかっている。

 ニイファに会いたい。会って、あの時おとなしくニイファの指示に従わなかったことを謝りたい。

 かちゃりと部屋の扉が開いたかと思ったら、背の高い青年が入ってきた。ヴィオラの側に控えていた女性が立ち上がる。

「――殿下」

 殿下という言葉から、彼が、この国の皇族であることはすぐに理解できた。

(いえ、私は……この人を知っている)

 ヴィオラに与えられた王族としての教育の中、各国の王族貴族の基本情報を頭に入れておくのは大切なことだった。特に重要な相手については、どんな容姿をしているのかわかるように、肖像画も取り寄せられていたのである。

< 22 / 225 >

この作品をシェア

pagetop