転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 皇妃が首を傾げてつぶやいた。

「……リンデルトとセスはどうなるのかしら」

「彼らは、国外追放になるのではないかと。もっとも、もうしばらくの間は背後関係を聞き出すために、騎士団で尋問されることになりますが」

 親友を失うことになったリヒャルトは、やはりヴィオラには計り知れないようなつらい思いを抱えているみたいだ。

(……そう言えば)

「リヒャルト様、私、まだお礼を言っていませんでした。助けてくださって、ありがとうございます」

 彼には、何度も命を救われている。どれだけ感謝しても足りないくらいだ。

 ひょっとしたら、ヴィオラはここで生きていくことができるのかもしれない。

 リヒャルトを陰から支える存在として。彼の恋人になりたいだとか妃になりたいあとかそんなことは望まない。

「……当たり前だろう。俺が、満月宮に君を呼んだんだから」

 そうか返す彼の顔を見つめ、そしてゆっくりとヴィオラは微笑んだ。

(……いつか、この想いを口にすることだけは許されますように)

 ヴィオラはあまりにも子供だから、今はまだ、伝えることもできない。

 そんなふたりを皇妃が微笑ましく見守っていることに、ヴィオラは全然気がついていなかった。

 いつか、気持ちを伝えるその日が来ることを祈り、その時まで努力を重ねていくだけ。

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