転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
 というより、ヴィオラのドレスを選ぶ話から、なぜ、リヒャルトを夫にする話になっているのだろう。

「今すぐにとは言わないわ。そうね、あと四、五年したら問題なくなると思うの。十二歳と二十四才だったら犯罪だけど、十六歳と二十八歳なら、問題ないと思うのよ」

「そ、それもちょっと……」

 この世界、十二歳差の夫婦なんて珍しくもない。それに、王族ならば、形式として結婚だけしておいて、きちんとした夫婦になるのはその先ということも珍しくはない。

 だけど、ヴィオラが望んでいるのはそんなことではない。

「母上。ヴィオラをあまり困らせないでください。ヴィオラからしたら、俺が年上すぎるんでしょう」

「リヒャルト……あなたまで、そんなことを言うのね。私の娘も同然なんだもの。手の届くところに置いておきたくて当然でしょう?」

 なんて話をしていたら、使用人が皇帝の訪れを告げる。

 結局、あれ以来皇帝は週の内半分以上を満月宮で過ごすようになった。

「では、母上。父上とごゆっくりどうぞ。俺は、ご挨拶をしたら、ヴィオラを図書室に連れて行きます。いいよな、ヴィオラ」

「――はいっ!」

 リヒャルトが手を差し出してくれて、ヴィオラはその手を取る。

 今は、これで十分だ。

 今は、多くを望まない。

 リヒャルトがいて、ニイファがいて、皇妃がいて――そして、時々顔を出す皇帝もいて。ゆったりとした時間を過ごせればそれでいい。

(私、今でも幸せ過ぎるくらいだから)

 だから、もう少しだけ、今のこの関係のままでいられますように。

 ヴィオラは、強く願った。
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