転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「……ありがとうございます。殿下が助けてくださったのですか？」

　その問いかけに、彼は無言でうなずいた。

「それと、君の侍女だが」

「ニイファは……」

　予想はしていたけれど、背筋が冷たくなる。

　ヴィオラを押し出すのがやっとの大きさしかない馬車の窓。そこからヴィオラを押し出し、ニイファは馬車と一緒に沈んでしまったのだ。

　ニイファのことを思い、目から涙が溢れ出そうになった。もっと自分に力があれば、彼女を湖に沈めることにはならなかったのに。

「人の話は最後まで聞け。君の侍女も無事だ」

　リヒャルトの言葉が信じられなくて、目を瞬かせる。

　その時、控えていた侍女が立ち上がる。彼女が扉を開くと入ってきたのはニイファだった。

「ヴィオラ様、私は無事でございますよ。頭の包帯を巻き直しているところだったので、お目覚めの時におそばについていなくて申しわけありませんでした」

「ニイファ！　どうして！」

　ニイファの頭には、痛々しく包帯が巻かれていた。頭に怪我を負ったということか。

「君は、とてもついている。主の命を守ろうとする立派な心がけの侍女が、一緒にこの国まで来てくれたのだから」

　そう口にした時、ほんの少しだけ、リヒャルトの目元が柔らかくなったような気がした。

（……この人、こんな顔もするんだ？）

　ベッドに横たわったまま、ヴィオラは呆然とリヒャルトの顔を見上げていた。

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