転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
「緊張しているのか？」

「んー、そうですね。ちょっと緊張してるかも」

　満月宮と言えば、皇帝と皇妃の住まいだ。そこで開かれるお茶会に招待されるのだから、緊張しない方がおかしい。

「あまり緊張しなくていい。母上と俺しか参加しないから」

　本来ならそんなことまでしなくていいだろうに、皇妃は満月宮の前に出て待ってくれていた。明るい茶色の髪に同じ色の瞳。少し頬が痩けているように見えるのは、病気がちなせいだろうか。

（……具体的な病名がついているわけではないのよね、たしか）

　ニイファが集めてくれた宮中の情報を思い出す。アデリナ皇妃の病は、どちらかというと心に起因するもの？そうだ。

　母国は滅亡、そして皇妃という立場にありながらも皇帝の寵愛が薄く、その地位は盤石というわけではない。そのため、息子であるリヒャルトは皇太子でありながらも、家臣達に時として軽くみられることもあるのだとか。

　軽んじられるのは、リヒャルト個人の資質を疑問視しているわけではなく、後ろ盾が存在しないからだというのも皇妃の心に負担をかけているのだろう。

　そんなことを考えながら、皇妃の前でスカートをつまみ、最大限の敬意をこめて頭を下げる。

< 76 / 225 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop