転生王女のまったりのんびり!?異世界レシピ
(……この人ともう会わないですむと思うとほっとするな)

 ちらりとザーラの方に目をやれば、この場をとても面倒に思っているようだ。ヴィオラを通り越し、どこか遠くを見つめている。

 母が生きていた頃から、父の寵愛を思うままにしてきたくせに、母亡きあと、ザーラはヴィオラを邪魔者扱いし続けてきた。不自然な『事故』が続いたのは、ヴィオラを抹殺するため。

 ヴィオラが死んだ時、周囲に懸念を抱かせないよう王女として最低限学ばなければならないことは身につけさせてくれるあたり、とてもザーラはしっかりしている。

「お父様と王妃様の名を汚さぬよう、一生懸命頑張ります」

 丁寧に頭を垂れて、そう言ったヴィオラに対し、父は一言だけ返した。

「お前ならば大丈夫だろう」

「ありがとうございます」

 娘との最後の別れなのに。もう一言くらいあってもよさそうなのに。その想いは、心の片隅にしまい込んでおく。

 代わりに口を開いたのはザーラだった。
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